- 日本農業の真の問題点は何!?
- 国際競争力をつけるためには農家の数は減った方が良い!?
- イスラエルから学ぶテクノロジー農業とは!?
こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
本日は「日本を救う未来の農業」のレビューを書いていきたいと思います.
この本は当たりです.数ある日本農業を考える系の本で,ここまで深く同意した本はないです.
正直,読む前と読んだ後で,日本の農業に対する見方が180度変わりました.
日本の農業を支える技術から,安全性,さらに政治やルールに関して,全ての見方が変わりました.
日本の農業を深く考えるきっかけになったよ
そこで,この記事では,本書「日本を救う未来の農業」の簡単な紹介と,読んだ感想についてざっくりと紹介していきます.非常にオススメ度が高い本なので,農業関係者だけではなく,全ての人にご一読いただきたい本になっています.
日本を救う未来の農業
本の著者は竹下正哲さんという拓殖大学国際学部の教授の方です.
大学院の頃に,小説を執筆し,太宰治賞を受賞した敏腕研究者です.
この本は,現在の日本の農業に取り巻く構図を客観的に説明した後,日本農業の真の問題点(価格が高すぎ,国際競争力がない,これらの原因は農作物を育てる効率が非常に悪く,収量が低いということ)を指摘します.今後,日本の農業が生き残るための解決策として,イスラエルの農業をなぜ見習うべきなのかという点を解説されています.
本書の目次はこのようになっています.
<目次>
- 日本に迫りつつある危機
- 全てを解決する新しい農業の形
- 最先端ICT農業とは
- イスラエル式農業の日本への応用実験
- 近未来の農業の形
本書は250ページくらいですが,竹下先生の文章が上手すぎて,すんなりと頭に入り,ストレスなく読むことができました.
さすが太宰治賞を受賞された方です.文章のプロです.因果関係を説明するのが上手いだけではなく,日本の農業はそうだったのか!!という発見と,ではどうすれば良いのか!という具体的解決策が示唆されているので面白いのです.自分にとって180度考え方の異なる新しいことがらも,国連食糧農業機関(FAO)などの信ぴょう性の高い機関が発表されている統計データなどの数字を根拠にしているので,十分納得させられます.
日本の農業について考えてみる
日本の農業の真の問題点はどこになるのか?ということを答えられる人はかなり少ないと思います.大体の人は,以下の問題をあげると思いますが,これらは問題ではないと言います.
・高齢化
・農家の減少
・耕作放棄地
・食料自給率
これらは問題ではないのだよ!
日本の農業の真の問題は,鎖国や多額の補助金のせいで国際競争力がなく,国産野菜の価格が高いこと,50年前から日本の農業は進歩をしていないので,農作物を育てる効率が非常に悪く,収量が低いということが大きな要因となっているといいます.
国際競争力をつけて,お金を稼げるようになると,それがビジネスになり,若い人もどんどん農家を目指すようになるといいます.しかし,日本の現状の農業人口は多すぎるとも本書で指摘があります.使用できる農地が狭いという理由があり,少ない農地で作物を育てるには効率が悪いといいます.また食料自給率に関しては,日本独自で謎のカロリーベース計算がされていたり,カロリーが高い国産和牛も海外のトウモロコシなどを使って育てていたら,日本の食料自給から省かれて計算されるという謎の仕組みがあります.
(詳しくは本書をご覧ください.)
図表を使い,正式なデータと一緒に説明されているのでものすごくわかりやすいよ!
実は日本は農薬大国!?
これも面白いのですが,日本人は日本で作られた国産の野菜は安心というイメージを持っている人が大多数だと思います.しかしそれは大きな誤解で,日本は世界でもトップクラスの農薬大国なのです.実際においらもツイッターでアンケートをとりました.
引用
FAO(国連食糧農業機関)の統計によると,中国の農薬使用量は,農地1haあたり13kgという世界トップレベルの数値だ.だが,実は日本も11.4kgの農薬を使っており,中国とほぼ変わらない.日本も中国に劣らず,世界トップレベルの農薬大国なのだ.
以下は,ツイッターのアンケート結果です.
【国産のお野菜】
農薬を世界トップレベルで使ってる国は、中国(1haあたり13kg)です。アメリカは約2.4kg/haです。
イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ブラジル、これらは4kg/ha以下です。では日本はどうでしょうか?( ´ ▽ ` )
国連食糧農業機関(FAO)が出してる統計より。
— けんゆー🥑お百姓見習い (@kenyu0501_) November 30, 2019
現にツイッターでアンケートを取った結果にも現れていますが,「国産が一番安全」と思っている方も非常に多いと思います.しかしながら,農薬という観点から見るとその安全性が非常に疑われます.こういった事実もあまり表立って伝わっていないと思います.関税撤廃(徐々に関税がなくなっていくのもある)された中,農薬の少ないヨーロッパの作物の売れるようになるのは,時間の問題です.日本の国際競争力をいかにしてつけるのか,ということを真面目に考えなければいけないですね.
関税撤廃により,このままではやばい!
TPPやFPA,アメリカとも貿易協定を結んで,ついに「鎖国」状態だった日本に海外の農作物が入ってくるようになると思います.(もはや,そうなっていますが)
本書では,海外と戦うために日本農業が考えなければいけないことは「収量」であると言います.
日本人は「美味しい食べ物」へのこだわりが強く,多く収穫するというところに関心が向かないようですね.おいらも美味しい野菜を作りたい!と強く感じていましたが,この本を読んで,量を沢山取れる工夫をするためにはどうしたら良いか,ということがいかに大切であるかということを認識させられました.(日本は国土が比較的多く,農業に適した環境であるので,総生産量は多いが,1haあたりの生産がものすごく低い)
また,これまで鎖国&潤沢な補助金のせいで,日本の農業は全く進歩していないといいます.リスクを取らず,現状維持を続けてきた結果,50年前とほとんど同じやりかただと言います.そのため,この本では最新農業を行なっている,「イスラエルの農業」が紹介されています.
イスラエルは最新農業国!?
この本を読んでびっくりしたことは,実はイスラエルは最新テクノロジーを駆使した農業国であって,作物の輸出量が非常に多いということです.輸出量が多いということは,国際競争力が高く,優れた農法を持っていて,さらに日々進歩しているということに起因すると思います.
イスラエルとはどのような国なのか?
本書を読んで驚いたのですが,実は,イスラエルという国は,全く農業に適していない国なのです.日本のように雨が降らず,国土も日本の四国と同じくらいで,農業に適した土がないようです.国土の60%が砂漠です.さらに,イスラエルは暑いだけでなく,乾燥地であるので,灌漑をすると畑に塩が積もるという問題もあるそうです.また,物価が高く,日本よりもガソリン代,水道代,人件費,輸送代,農薬代などが高いという国です.
そういった恵まれていない国だからこそ,技術改良を50年間繰り返し,最新農業を行うため,リスクをとって発展してきたと言います.驚きのサクセスストーリーですね.
では実際にどのようなことをしているのか?
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが,ざっくりと羅列します.
- ドリップ灌漑.
- ドリップ・ファーティゲイション.
- IoTクラウド農業.
最近は,日本でもよくスマート農業という言葉を耳にしますが,イスラエルはそれが当たり前のようですね.また,農業を行う時の意識も,きちんとビジネスとしていかに収量を向上することができるかということを念頭に置いているそうです.
そういった技術やマインドを見習いつつ,おいら達も農業に向き合っていきたいと強く感じました.
「日本を救う未来の農業」,オススメですので読んでみてください.
農業関係者には,こちらの本もオススメです
<おいらも果物作っています>
おいらが管理している「糸満フルーツ園 けんちゃん」です.
もし時間がありましたら,覗いてみてください.