脳波モデルを用いたてんかん波判別手法の検討
この記事はこんな人にオススメです.
  • 脳波解析をしている方
  • てんかんについての研究をしている方
  • 時系列信号のモデリングをされている方

こんにちは.けんゆーです(@kenyu0501_).

10月25日に,パシフィコ横浜で開催された「日本てんかん学会学術集会2018」に参加してきました.

おいら達の脳波モデルがてんかん脳波判別に対して有効かどうかを報告してきました.
簡単ですが,せっかく資料を作ったので記事にあげておきます.
参考になれば幸いです.

研究目的

てんかん波の判別を,自動で行うことを目的としています.

これまで,お医者さん達が経験的,複合的に実施してきたてんかん波の診断を少しでも手助けできる一つのツールになれればと考えました.

研究方法(モデルパラメタを実験的に同定する方法)

今回は,ヒト脳波ではなく,ラット(動物実験)を用います.

てんかん誘発剤を用いて疑似的にてんかん状態にしたラット4体に対して,脳波モデルが有効かどうかの検討を行いました.脳波モデル上の制限によってアルファ波帯域のみの検討になります.

解析方法は,生体信号モデルとしてしばしば利用される非線形振動子により脳波をモデル化し,モデル内に含まれるパラメータを実験的に同定する方法です.

以前,「ゆらぐ脳波データからどのように集中度合いを可視化するか」という記事を書きましたが,そちらと同様な解析手法になります.

上に貼ったスライドを参照してもらえばと思いますが,脳波モデルに含まれるモデルパラメタは,減衰性と復元性,非線形性,外部入力の信号強度,各周波数および位相差の六つのパラメタです.

六つのモデルパラメタを約0.5秒の解析窓毎に,モデルの出力と実波形の誤差で定義される評価関数を最小とするように同定しました.

解析には,正常時とてんかん波の振幅が十分に発達した明らかな異常時の脳波を各10秒間ずつ使用しました.実験的同定ですね!

同定した値からパラメタ毎の区間平均を算出し,正常時の値を基準に正規化を行って検討を行ってます.

得られた値を用いて,同定したパラメータの特性を正常時と異常時で比較し,てんかん波判別の実現可能性について検討しました.

解析結果について

さてさて結果はどうでしょう.

4体の解析結果には共通なことが見られ,てんかん波判別が実現可能ではないかと考えています.

4体を解析した結果,異常時の非線形パラメタは正常時の値の25%以下まで減少することが確認できました.

脳波などの生体システムでは,面白いことが分かっています.

それは,正常状態においてカオス的に振る舞いを示しますが,異常が発生するとカオスが消失し周期的になることです.

てんかん波の場合も1秒に約1回,周期的にスパイク波が出てきますよね.
それをモデルパラメタの数値で示すことができたということです.

すなわち,そういった生理学的観点から,おいら達の脳波解析手法の有効性を証明することができました.(まだまだ分からないことはいっぱいありますが,,,)

また,信号強度パラメータは約3倍以上に増加し,測定点の脳波と周囲から伝わる波の角周波数分布にも特徴が見られました,

これは,ちょっと振動モデル上の結果ですので,生体の解釈としては非常に難しいところがありますが,,,今後検討していく課題の一つです.

まとめ

この報告では,弊脳波モデルをてんかん波の判別に適用させた結果どのようなことが言えるのか?についててんかん専門医の方達を相手に報告しましたが,いろんな有益な情報交換ができました.

普段は機械学会や生体医工学会などに参加するので,すごい新鮮なアイデアをいただけました.

いい経験になったと同時に圧倒的に医学の知識が足りないと感じたので,そこらも勉強していきます.

実際に医学の分野に弊脳波解析手法を落とし込んで行けるように頑張っていこう!笑