てんかん波は脳を直接冷却すると抑制される!どのくらいの温度が良いのか!?
この記事はこんな人にオススメです
  • てんかんという病気に興味がある人
  • 脳波解析をしている人
  • 脳冷却に興味がある人

こんにちは.今日はてんかんの脳冷却についての記事を書きたいと思います.
”てんかん”という脳の病気に馴染みのない人も,”んっ!!!脳を冷却する!!??”って思っている人も,もしかするといるかもしれませんが
時間がありましたら読んでくださると幸いです.

多少テクニカル的な内容ですので,ちょっと掻い摘んで記事を書きたいと思います.
本記事の流れ的には,ざっくりと”てんかん”という病気について触れたあとに,その後脳冷却について書きます!
専門的なことが気になる人は,学術論文を読んでいただければと思います.

てんかんとは!?

”てんかん”という病気をご存じの方は飛ばしてくださいませ.

てんかんとは,脳の異常な電気放電によって,体のコントロールが効かなくなる病気です.
体のコントロールが効かなくなるので,症状として発作や痙攣が見られます.

(Youtube 参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=gUzTE_sG2eQより)

脳神経は,電気的にやり取りをしているのはご存知でしょうか.
人しかり動物は脳が体の動きや心の状態を司っていると言われていますが,これは脳という体の司令塔が命令を出していて,その信号は電気的になされています..

しかしながら,なんらかの原因(交通事故とか,合併症,生まれつき)などで脳に傷がついてしまったりしたら,その電気的信号がうまく行かなくなり,”てんかん”という病気が起こります.

そのため,”てんかん”は脳波に特徴が現れます.

てんかん時に見られる脳波を,”てんかん性異常脳波”と言いますが,普通に見られる脳波よりも鋭く尖った,スパイク波というものが見られるのが特徴的です.

てんかんInfoよりてんかん波の波形は抜粋しますが,このようなものが見られます.全ててんかん性のものです.

以上の画像は,てんかんinfo,診断と治療についてから抜粋しました(参考HP

てんかんになると,上の画像のような鋭波や棘波が観察されるのでよく脳波を用いた診断がなされます.

では,てんかんの治療はどうするの!?

では,てんかんは治療できないのか?というとそうでもありません.
普通は,抗てんかん薬という飲み薬を定期的に飲むことで,先ほどのてんかん発作を抑えることが可能です,

しかしながら,その抗てんかん薬はてんかん患者のうちおおよそ7割の患者にしか有効ではありません.

残りの3割は飲み薬を飲んでも有効ではないのです.

では,どうするのか?

残りの3割の患者は,いわゆる”難治性てんかん患者”という風に言われるのですが,彼らは,てんかん波が出現する脳の一部分を切除する外科的治療をすることになります.(異常な脳の部位はだいたい変わりません)

脳を切除する手術は,もちろん想像通りリスキーですが,飲み薬が効かなければ致し方ありません.

しかし,脳の部分のうち,全て切り取ってもいいということではありません.

精密な検査をもちろん行って,体動や言語を司る重要な位置であったりすると脳を切り取ることができません.

てんかん発作は起こらなくなるけど,喋りにくくなったり,体を動かしにくくなったりしたら嫌ですよね!?

そのため,その他の方法が求められるわけです.

脳を冷やす!!!???

そこで,脳を直接冷却するという面白い第3の方法が存在します.
(迷走神経刺激療法(VNS)という電気的刺激を与える方法もあるが,また後日...)

未だ世の中ではこれがインプラントデバイスとして出回っていない研究レベルの話ですが,かなり将来性のある話です.

山口大学や他の多くの研究所がこの難問に立ち向かっています.

では,どうやるか?というと,シンプルに脳を直接冷却するだけです.
2012年にてんかんの脳冷却に関して発表された論文を見てみましょう.

この論文では,てんかんの状態を疑似的に作成したラットを使った動物実験をしています.
そのラットに対して,頭蓋骨を開けて脳を直接,冷却装置(ペルチェ素子)で冷やすというものを行っています.
冷却の条件は,生体(ラット)が持っている恒温状態の35℃程度から,25℃,20℃,15℃に冷却を行うというものです.

以下結果をご覧ください.

(参考:Focal brain cooling terminates the faster frequency components of epileptic discharges induced by penicillin G in anesthetized rats, Hiroyuki Kida, et al, Clinical Neurophysiology, 123 (2012) 1708-1713.)

上のグラフから,それぞれ脳表の温度を25℃,20℃,15℃に冷却した場合のてんかん波の状態を脳表の温度と時間的に合わせて表示しています.

上の結果を見ると,15℃の方が,よりてんかん波が消失(脳波の振幅が小さくなっている)していることが分かると思います.

学術論文の方では,脳波の含まれる周波数で評価しており,より高周波の波(アルファ・ベータ波〜)が消失するという主張がありますが,目で見ても一目瞭然ですね.

すなわち何が言いたいかというと,

てんかんという病気は,脳波に異常が見られる病気ですが,その脳波の異常は冷却を行うことで収まるので,もしかしたら,脳を直接冷却することで,日常的なてんかん発作を抑制できるのではないか?

ということです.

しかしながら,ヒトの頭の中に冷却装置を埋め込まないといけないので,それなりの基礎研究が必要になりますが,今後とも期待ができる研究であると思います.

今後の医学がより発展することを願っておいらも参画していきます!