- 非線形科学を勉強している方
- 数学や物理が好きな方
- カオスに関するオススメ図書を知りたい方
こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
最近「非線形な世界」という本を読みました.
非線形科学を勉強している学生たちにオススメな一冊だと思います.
書籍のざっくりな内容について
ハードカバーの285ページあるしっかりした本です.
艶消しブラックなカバーでかっこいいですぞ.カバーを外すと真っ白で,落合陽一先生の「デジタルネイチャー」を想起させるようなオシャレな本だ!
横書きの文章ですが,数式はとても少ないです.
非線形な現象を言葉を使って解説していくというスタイルです.
目次(章)はこんな感じです
- 非線形世界を見るとはどういうことか
・線形系の特徴
・非線形系の特徴
・本質的に非線形な系
・「世界を見る」とはどういうことか?
・この本の構造 - 概念分析ー明晰な議論の前提
・典型例からの出発ーカオスを例にして
・力学系からの準備
・カオスを特徴付ける
・’歴史の量’はどうはかるか
・情報をどう定義するか
・速度論的力学系
・カオスらしさをどうはかるか
・ランダムさの特徴づけの準備
・計算とはなにか?
・チューリング機械
・ランダムさを特徴付ける
・カオスの本質の究極の理解
・ランダムさの特徴付けはこれでいいのか?
・「複雑性」はどう理解されているか - くりこみー現象論と漸近解析
・現象論とは何か?
・意識されないほど普遍な現象論
・現象論はいかに得られるかーくりこみとの関係
・くりこみの二つの考え方
・くりこみのイロハ
・長時間挙動とくりこみ:簡単な例
・共鳴とくりこみ
・くりこみから見た統計 - モデル化ー現象の記載と理解
・モデルとは何か
・モデルと現実の対応
・記述の道具としてのモデル
・論証の道具としてのモデル
・モデル化事例ーabductionの例
・モデルがよいとはどういうことか?
・モデル化の副産物 - 複雑性へ
・意味と価値
・パスツール連鎖
・基礎条件
・基礎条件は何を導くか
・複雑系にどうアプローチするか
・「生物系の理論」はあるか
・基礎条件はどう変化するか
・複雑系の「教訓」
本を読んでみての感想
世の中は非線形なので,どんな現象も一般論では理解できることがないと感じます.
そのため,現象をそもそも現象論として観察していこうという趣旨の本です.
「くりこみ」とか「モデル化」などは,現象を理解する上で重要な概念であり,本書では例を使いながら非線形を紐解いていきます.
「くりこみ理論」の考え方の極意は,系の安定な諸性質をその現象を説明しているとされるモデルから抽出することである.ここで,ある性質が安定かそうでないかは系を(摂動などで)ゆさぶってみるとわかる.ゆすぶってもびくともしない部分があるとき,厳密な意味で現象論が可能になる.もちろん,このとき面白い現象論があるためには,ビクともしない部分が自明であると困る.自明でないびくともしない部分を見せる現象はくりこみ可能である.
本書「非線形な世界」引用
概念分析
直感的には理解しているけど,いざそれを言語化するとなると難しいことは多いと思います.
本書では,概念分析と読んでいて,そういう直感的にわかっているつもりの事柄を明示的に記述することを主に行っています.
第2章で「カオス」について取り上げられているのですが,自分の頭の中の理解がすっきりしました.
現象を見る視点を養う
現象をどのように見るかという視点を養うことができると感じます.
若干「哲学」よりなところもあり(そういう狙いだと思います),技術的なことはあまり追求してませんでした.
そのため,数式はあまり使われていないのですが,数学や物理の言葉はある程度(大学で習う範囲)は知っておいた方が理解に良いと思いました.(本書でも断りを無しに,数学や物理の言葉を使うぞ!と言ってます笑)
ノイズに関して
例えばノイズに関しても,非線形な世界では重要な要素であると問います.
線形系でのノイズは大して深刻ではないのですが,非線形の場合はちょっと違ったりします.
(ノイズの大体は平均がゼロであるものを扱うことが多いので,アンサンブル平均をすると線形系ではノイズの効果がなくなる)
(アンサンブル平均とは,何度も同じ条件のもとで繰り返された観測結果の平均と考えて良いと思います.)
非線形の場合はそうではないですよね.
系のスケールの見方は色々あると思いますが,本書では重要な性質だと位置付けています.
ノイズに対して,初めは敏感に反応するが,ひとたび出来上がればかなり安定な時空構造があればいい.
本書「非線形な世界」引用
現象に対する考え方や見方は様々ですので,参考になります.