【書籍要約】植物は知性を持っている〜20の感覚で思考する生命システム〜
この記事のポイント
  • 知性とは問題解決能力である.
  • 我々人間がいかに植物を下に見ていて,いかに植物にいいように使われているかが分かる.
  • 現在地球に生息している植物は,進化の道筋の最先端に位置する.

こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
最近は,農業をしているので,植物関連の本を読み漁っています.
今回紹介する「植物は知性を持っている」という本はかなりオススメなのです.

というのも,おいらはテクノロジー系から生物生理学まで,自然科学全般がものすごく好きなのです.
そのため,ただ植物を栽培するよりも,植物が持っている機能,それがどのような理屈で動いているのか,人間または社会がそれらとどのように結びついているのか,ということを知るのが好きです.

おいらと同じような趣味嗜好の人にはとてもお勧めできる一冊です.
この記事では,「植物は知性を持っている」がどのような本なのか,ざっくりと要約していきます!

本書について

本書は2015年に発行された比較的新しい本です.
著者はステファノ・マンクーゾさん,アレッサンドラ・ヴィオラさんというお二人の方です.久保耕司さんという方が,日本語に和訳されています.

この本で定義されている知性という言葉は,「生きている間に生じる様々な問題を解決する能力」とし,あらゆる植物の様態・戦略を示し,それらから植物の知性を裏付けます.

序文において,この本の位置付けは,「植物の知性を人類に認めさせるために,我々人間のおごりや傲慢を払拭させる本」であるといいます.これまで,私たち人間が持っていた思い込みというものが感動という形で払拭されます.SFのような話も多々あると思いますが,この本で書かれているものは全て植物生理学者が示した根拠をもつ事実です.

さて,目次の方は,このような流れになっています.

1. 問題の根っこ
2. 動物と違う生活スタイル
3. 20の感覚
4. 未知のコミュニケーション
5. はるかに優れた知性

それぞれの章を取り上げて,おいらが感動したところを深掘りしていきます.

第1章 問題の根っこ

人間の持つ植物に関する価値観は相当底辺だ」ということが,本書で危惧される問題の根っこになります.
人間が植物に対して抱く感想のほとんどが,「植物は知性の点で劣った存在」ということであります.しかし,その思いは間違いであり,問題であるといいます.

なぜ人間が植物に対して,そのようなことを思っているかと断言できるかというと,歴史を含め,多くの人類が描く植物に対する扱いを確認することで理解できます.

例えば聖書の中では,鳥や動物に関する心配は記載されているが,植物に関する記述はあまりにも乏しいという現実があります.キリスト教だけではなく,イスラム教もどのような生き物も絵に書いてはいけないという規律があるが,植物はその範疇にはないのです.
なので,イスラム美術では花の描写に情熱が傾けられていたのです.

さらに,私たちは,動物が上で植物が下という「生物ピラミッド」を完全に信じていますよね.ルネッサンス期,最も古来のシャルル・ド・ボヴェルの「知恵の書」に記載されている生物ピラミッドの植物の立ち位置は,「存在し生きているが,それ以上のものではない」とされています.この考えは,ルネッサンス期の人類のとても傲慢な解釈だといいます.

種の起源を出版したチャールズ・ダーウィンは,人類のこういった植物に対する価値観を覆させてくれます.彼の考えを本書から引用するとこうです.

「地上に現在生息している生物はどれも,それぞれの進化の道筋の最先端に位置している.さもなければ,すでに滅んでいたはずだ.」これは非常に重要な推論だ.なぜならダーウィンにとって,進化の道筋の最先端に位置しているというのは,進化の過程において驚異的な適応能力を発揮したということなのだから.

本書引用, p.34

植物研究に関しても,かなり軽んじられているといいます.
ゲノムの不安定性が初めて見つかった(これまでゲノムは固定的で不変性があるとされていた)のも植物であるし,細胞の発見RNA干渉も植物です.しかし,それらが評価されるのが「動物を扱って再発見された時」というなんとも不当な扱いを受けてきているのです.植物の重要性,生存を軽視した人類の価値観はどうなの?と一石投じる章です.
本章の最後の文章を引用します.

植物の過小評価は,私たちの文化によって必然的にもたらされた.科学界にも日常生活にも共通する価値観が,植物を生物全体の最下位に追いやっている.人類の生存と未来は植物にかかっているという事実にかかわらず,植物の世界全体が見下されている.

本書引用,p.44

第2章 動物とちがう生活スタイル

この章では,なぜ人間にとって植物は単なる原料,栄養源,装飾品でしかないのか?
私たちが,植物への一面的な見方を捨て去ることができないのは,どうしてなのか?
ということを深く考察しています.

その理由を紐解くために,まず,植物が動物に比べて優れている点を示します.

・単細胞生物のミドリムシ(植物)はゾウリムシ(動物)と同じ行動ができるが,ミドリムシは光合成が可能である.
・植物の体は,モジュール構造になっていて,どのパーツも代替可能である.
・創発特性という「グループを構成することによって個を超える特性」を持つ.

私たち人間や動物は,植物がないと生きていけい存在であり,依存しているにも関わらず,植物を下に見ていますよね.そういった見方は,「依存関係で完全な自由を感じられないから」だといいます.
ようするに,私たち人間は,その依存事実を弱さだと感じ,できる限り忘れ去ろうとしているといいます.

植物は,食べ物だけではなく,酸素や燃料などのエネルギーを私たち人間に提供してくれています.もし,植物が地球から無くなったらと想像すると,ゾッとしますね.いかに植物が偉大で,そして,どのように,これまでの長い歴史を辿ったのか,進化してきたのか,ということを知るのは凄くそそられますね.

古代太古の人類は,植物の大事さ,植物に関する知識があったと著者はいいます.そうしないと,生き残れないですからね.現代はあらゆるものがシステム化されて,スーパーに行けば年中,同じ野菜が,同じ品質で並べられているがゆえに,植物自体に対する関心が下がってきていますよね.植物への関心は持っておいたほうがお得だと感じますよ!

第3章 20の感覚

第3章は非常に面白かったです.
なぜなら,感覚器についてのお話だったからです.
活字が苦手な方は,ぜひ第3章から読んだら楽しいと思います.
目も耳も鼻もない植物に,果たして動物と同じような感覚があるのか,というお話なのですが,実は,植物には,20の感覚器があります.とても興味深い話です.

その中でも視覚に関する感覚器についてざっと取り上げて要約していきます.

視覚はある!?

視覚をどのように定義するかで変わってきます.視覚を「光学的な刺激を知覚する能力」と捉えた場合,植物というものは「視覚」を持っていると言わざるを得ません.

ペンのすけ

目で見る能力ではないのですよー!光の感覚なんだね!

植物は光にものすごい反応をします.
例えば,エネルギを蓄えるための光合成を行なうためにも光は必要不可欠です.
そのため,植物というのは,ものすごく戦略的に光に向かって行動します.
日陰にいると,自身が活動するためのエネルギ補給ができないですからね.

植物は光に向かって,成長していきますが,このような性質は「屈光性」と呼ばれます.
出来るだけ急いで,効率的に光を求めなければいけません.
互いに二つの植物が出会うと,戦いが始まるといいます.
ライバルの背丈を越えないと,エネルギ補給ができないからですね.
このような日陰からの逃走の動きは,「避陰反応(ひいんはんのう)」と呼ばれます.この避陰反応は肉眼でも確認できるので,有名な反応ですが,植物は,「リスクを計算して利益を獲得するために動いている」のですね.

植物が視覚を感じる場所は,主に葉っぱにある光受容体(フィトクロム,クリプトクロム,フォトトロピン)です.そのほかにも,茎や根にもあるそうですが,大部分は葉っぱです.
人間の視覚は目で感じますよね.それも生物の進化上,妥当の位置にあると言えます.
つまり,高い位置にあることで,視界が広がり,外部からの攻撃を防ぐことができるのです.

話を戻すと,植物も大きくなるため,より多くのエネルギを得るために戦略的に葉っぱに多く光受容体が集中しているのですね.さらに,光の色(厳密にいうと波長)も見分けることができるといいます.
また,有名な植物学者ゴットリープ・ハーベルラントは,植物の表皮細胞はレンズとして機能しているといいます.つまり,モノの形まで捉えていることになりますね.植物もバカにできないどころか,感動ですね.

嗅覚や味覚

そのほかにも,植物には嗅覚(植物全体の細胞に散らばる揮発性物質をとらえる受容体)があることや,さらに,自身でも作り出されるにおい(バジルやレモンなど)は植物の言語として機能させることや,味覚があることも明らかになっています.味覚に関しては,土の中のミネラルを選別できるので,もはや一流レベルの感覚器ですね.

ここら辺の具体的な説明は本書に譲ります!

人間と同じように五感を兼ね備えているだけではなく,なんと,植物にはほかにも15の感覚があるようです.人間のように自由に移動ができないゆえ,湿度を感じる感覚や,重力を感じる能力,空気中や地中に含まれる化学物質の感覚を備えているようです.
すごい以外何者でもないです.詳しく知りたい人は本書をぜひ読んでみてくださいね.

第4章 未知のコミュニケーション

こちらの章もかなり衝撃的な内容が多く,新たな発見に知的好奇心をくすぐられました.
こちらでは,植物が植物同士もしくは,他の生き物とどのようにコミュニケーションをとっているかについて詳しく考察しています.

植物は,ほかの植物や動物を情報ネットワークとして利用し,植物が生まれながらに持っている限界を超えて,探検調査の範囲を広げることができる.ほかの種族からちょっとしたサービスを受けたり,必要な場合に介入してもらったりできる.

本書引用,p.113.

ランの戦略的受粉の方法などはかなり面白かったので動画にしました.

ペンのすけ

Twitterをみてね!

他にも数多くのコミュニケーション形態があり,植物がどのように考え,行動しているのかというのを知るいいきっかけになりました.
植物は自身の親族を見つけることができたり,虫や他の植物と共生したりなどと多くの発見があります.

さて,第5章までありますが,記事がだいぶ長くなったので,ここら辺で割愛させていただきます!

かなり面白いものだと思うので,「植物は知性を持っている」読んでみてください!では!