【刑法総論の考え方】どうしたら犯罪になるのか議論する!!

こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
今回は,刑法について書きたいと思います.刑法は「刑法総論」と「刑法各論」に分かれます.関連する科目として,刑事訴訟法,少年法,刑事性政策があります.後ほど詳しく確認していきます.

ペンのすけ

刑法の勉強をしている方は一度目を通してみると良いと思います!法学部のお知り合いの方から情報提供をさせていただいた内容をまとめております!

刑法総論はエキサイティング

さて,刑法総論ですが,法学部で行われる刑法総論の講義は,非常にエキサイティングです.実際に「エキサイティング刑法」という本も出版されています.

まず,そもそも「」はいつ始まっていつ終わるかを考えなければなりません.
脳死は人の死であるかは,かなり問題になりますね.

また,人の行為とは何なのかが問題になります.つまり,行為でないものは,罰せられないからです.
例えば,眠っているときの動作は,行為ではありません.

行為をめぐっては,諸説ありますが,目的的行為論人格的行為論社会的行為論因果的行為論があげられます.先日,大学で社会的行為論の先生のお話を聞く機会がありました.私は,目的的行為論を支持します.目的的行為論とは,行為を目的的意思に基づく行為と捉える見解で,分かりやすい書籍として,ハンス=ヴェルツェル著「目的的行為論」が代表的です.

電気の窃盗は犯罪!?

犯罪には「構成要件」があり,簡単に言えば,犯罪の枠組みと言えると思います.窃盗罪で言えば,「財物」を「窃取」することが犯罪です.ここでは,「財物とは何か」が問題となります.有名な事件としては,電気窃盗事件があり,電気は財物にあたるかどうかが問題となりました.これに関しては,有体物説管理可能性説がありますが,電気の窃盗は,新たな条文が設けられ罰せられることになりました.

次に,「窃取」とは何かも問題となります.ひったくりは,強盗であって窃盗ではありません.ここに於いて,刑法における厳格な罪刑法定主義の観点から,厳密な定義と解釈が求められるのです.罪刑法定主義とは,あらかじめ犯罪とは何か,どのような刑罰を科されるのかを法律で定めておくことです.かつてこれを放棄した国家として,ナチスドイツソヴィエトロシアがあげられます.

罪刑法定主義には,以下の派生原則があります.

    1. 明確性の原則
    2. 慣習刑法の排斥,
    3. 遡及処罰の禁止,
    4. 類推解釈の禁止,
    5. 絶対的不定期刑の禁止

慣習刑法とは,例えば「村八分」があります.
無期懲役は,仮釈放が有り得るので,絶対的不定期刑ではなく,相対的不定期刑です.(なお,少年には不定期刑があります).
刑罰が出てきたところで,死刑について述べますが,死刑は,憲法でいう「残虐な刑罰」には当たらないと解されます.

死刑を巡っては様々な議論がありますが,日本は死刑を廃止しないことに関して,外国の人権団体が批判しています.
死刑に関しては,冤罪問題が避けて通れない問題です.最近では,袴田事件が注目を浴びました.
さらに,警察は証拠を捏造した事件もありました.(松山事件)死刑判決を受けて,獄中で亡くなった人もいます.名張毒ブドウ酒事件の奥西勝被告人もそうです.本人が亡くなっても,再審開始を求める動きはあります.

先日,ある死刑問題の懇話会にて,法哲学や倫理学,アメリカ憲法学や神学まで出てきて,刑事法だけの議論にとどまらず,議論は尽きませんでした.(途中で退席しました).罪刑法定主義に関しては,「夏目文雄・上野達彦著 犯罪概説」が分かりやすいです.

手術やカジノはなぜ違法じゃないの!?

次に「違法性」が問題になります.犯罪が成立するためには,犯罪構成要件に該当する行為が「違法」でなければなりません.正当防衛や緊急避難,正当な業務行為は違法ではありません,ここでいう正当業務行為の例として,医師による手術があげられます.
これは,傷害罪が成立しません.また,患者の同意があるので,同意による行為とも言えるでしょう.

また,法令による行為は違法ではありません.例えば,競馬,競艇,競輪,カジノは,各法令があり,賭博罪または常習賭博罪,賭博開帳図利利得罪は成立しません.パチンコについては,争いがあります.このように違法性に欠ける行為は,犯罪ではありません.なお,違法性をめぐっては,違法性の意識が必要かどうかで,必要説と不要説があります.

また,違法性には「」が必要とされ,例えば,チリ紙1枚とか,外れ馬券1枚の窃盗罪の成否が争われた事件,1厘相当の葉タバコを手刻みで消費した事件もありました.これを可罰的違法性の問題といいます.

未成年者はなぜ刑法で裁かれないの!?

次に,犯罪が成立するためには,「責任」,つまり非難に値することが必要です.
行為者が他の行為を行える可能性があった場合には,行為者は有責です.これを「期待可能性」といいます.刑事未成年者は刑法では裁かれず,少年法の適用を受けます

また心身耗弱者の行為は刑が減免され,心神喪失者の行為は責任がありません.しかし,近年では責任能力の存否が厳しく判断されています.このように,犯罪が成立するには,3つの要素が必要です.

ペンのすけ

3つの要素とは,「構成要件」,「違法性」,「責任」だったね!


しかし,構成要件は,違法類型なのか,違法責任類型なのかにも争いがあります.

犯罪が成立するためには!?

犯罪が成立するには,故意による行為であることが原則で,過失は例外的に処罰されます.故意と過失の限界には,争いがあり,「未必の故意」と「認識ある過失」の区別は難しいところです.

また,行為と結果発生の間に因果関係があることが必要です.

故意は,体系的には,どこに位置づけられるのか,故意の体系的地位と言われる問題ですが,故意を主観的違法要素と考える見解と責任要素と考える見解があります.

故意以外に,財産犯においては,主観的超過要素として,「不法領得の意思」が要求される場合があります.
これは,窃盗罪と器物損壊罪の区別や,窃盗罪と不可罰な使用窃盗の区別のために要求される犯罪の客観的な側面を超えた主観的な要素です.
なお,これを不要とする見解もあります.犯罪には,既遂と未遂があり未遂も罰せられるものがあり,予備罪が規定されている条文もあります.

中止犯という規定もあり,自己の行為により犯罪を中止した時に,刑は必要的に減免されます.
また,正犯だけでなく,間接正犯,共犯もあり,共同正犯,教唆犯,幇助犯に区別されます.共同正犯を巡っては,共謀共同正犯の成否や過失の共同正犯の成否が問題となりますが,判例はこれを肯定しています.

一つの行為で二つの罪になる場合は!?

犯罪の数(罪数)も問題になります.基本的には1つの行為で1つの犯罪が成立するのですが,1つの行為で,2つの罪名に触れる場合を観念的競合といい,重い方で処断されます.確定判決前に複数の犯罪を犯している場合は,併合罪といい,一番重い刑の1.5倍の刑が科せられます(死刑の場合は,死刑だけです).また,2つの犯罪が目的と手段の関係にあるときを,牽連犯といいます.住居侵入と窃盗が例として挙げられます.これは,重い方で処断されます.

また,重い方の罪に軽い方の罪が吸収される場合もあります.なお,不可罰的事後行為もあります.

最後に刑罰ですが,生命刑としての死刑,自由刑としての懲役・禁固,勾留(拘留は,判決前に拘置所に収容されることです),財産刑としての罰金,科料(過料は,行政犯です)があり,付加刑としての没収がそれに加わります.身体刑(例えば,鞭打ちや投石)や名誉刑はありません.
以上,長々と記述致しましたが,他人の見解を聞いたうえで,自分のしっかりとした考え方を持つことが必要な科目だと思われます.総論が理解できていないと各論の理解は不十分になってしまいます.

ペンのすけ

法学の道に進みたい人は,いろんなパターンを学ばないといけないので大変ですね!頑張ってね!